特許出願の流れと弁理士に依頼するメリットを解説

新しいアイデアや発明を形にしたとき、それを保護する最も有効な手段の一つが「特許出願」です。特許を取得することで、自分の発明を独占的に利用できる権利を得ることができ、他者による無断使用を防ぐことができます。本記事では、「特許出願の流れ」について詳しく解説するとともに、特許制度の基礎知識、特許出願のメリット、弁理士の役割と依頼する利点についてもご紹介します。
特許は発明を守るための制度
特許とは、「発明」を保護するための法律制度です。ここでいう「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作を指します。つまり、科学技術に基づいた新しい製品や方法などが対象です。
日本では、特許庁が特許出願を審査し、要件を満たす発明に対して特許権を付与します。特許権を得ると、原則として20年間、他者が同じ技術を無断で製造・使用・販売することを禁止できます。
特許出願のメリット
特許出願を行うことには以下のような多くのメリットがあります。
1. 発明の独占的利用が可能
特許を取得すれば、その技術を自社だけで独占的に使用することができます。これにより競合他社との差別化を図り、市場での優位性を確保できます。
2. 権利化による収益化
特許技術をライセンスとして他社に提供することで、ロイヤリティ収入を得ることが可能です。企業によっては特許権の譲渡や実施許諾が重要なビジネスモデルになっています。
3. 技術の信用力向上
特許を取得している企業や技術者は、技術的信頼性が高いと評価されることが多く、対外的な信用力の向上にもつながります。
特許として登録されるための要件
特許を取得するには、単に「新しいアイデア」だけでは足りません。以下の3つの要件を満たす必要があります。
1. 新規性
発明が「公知・公用・刊行物記載」でないこと。つまり、すでに世の中に知られていないことが必要です。
2. 進歩性
専門家から見ても「簡単に思いつかない発明」である必要があります。既存の技術を組み合わせただけのものでは進歩性が認められにくいです。
3. 産業上の利用可能性
その発明が産業(製造業・農業など)で利用できるものでなければなりません。机上の理論や自然法則そのものは対象外です。
特許出願にかかる費用と期間

費用
特許出願にかかる費用は以下の通りです(2025年現在、概算):
- 出願料:14,000円(電子出願)
- 審査請求料:約138,000円+請求項ごとに4,000円
- 登録料(1~3年分):各年ごとに2,100円+請求項ごとに200円
弁理士に依頼する場合、別途10万〜30万円程度の手数料がかかりますが、内容や事務所により異なります。
期間
特許取得までの期間は、平均で1年~1年半ほどです。ただし、補正対応や審査官の混雑状況によってはさらに時間がかかることもあります。
特許出願の流れ

それでは、実際に特許を出願する場合、どのようなステップを踏む必要があるのでしょうか。以下は、一般的な「特許出願の流れ」です。
1. 発明の内容整理と先行技術調査
まずは、自分の発明が本当に新しいものであるかを確認するため、先行技術調査(特許検索)を行います。すでに同じような技術が特許として登録されていれば、出願しても拒絶される可能性が高いため、この段階は非常に重要です。
2. 明細書などの書類作成
次に、特許庁に提出するための書類を準備します。必要な主な書類は以下の通りです。
- 願書(出願人の情報や発明の名称を記載)
- 明細書(発明の技術的内容を詳細に説明)
- 特許請求の範囲(保護したい技術範囲を明確化)
- 図面(必要に応じて)
- 要約書(発明の概要)
これらの書類は、法律的・技術的観点を踏まえて慎重に作成する必要があります。
3. 出願と出願日確定
発明内容を明確に記述した出願書類を作成し、特許庁に提出します。必要書類には以下が含まれます。
- 願書
- 明細書(発明の詳細説明)
- 特許請求の範囲(保護したい技術の範囲)
- 図面(必要に応じて)
- 要約書
提出方法には書面提出とインターネットによる電子出願の2種類があります。
● 書面による出願
特許庁に直接書面を郵送または持参して提出する方法です。手続きは可能ですが、手数料が割高になるほか、処理に時間がかかる傾向があります。2025年現在、ほとんどの出願は電子出願へ移行しています。
● インターネット(電子出願)による出願
現在主流となっているのが、**特許庁の電子出願ソフト(特許庁の「特許電子出願ソフトサポートサイト」からダウンロード可能)**を利用したオンライン出願です。電子署名やICカード(住民基本台帳カードや商業登記電子証明書など)を用いて本人確認を行い、特許庁へ直接データを送信します。
電子出願の主なメリット:
- 出願料が書面より安価になる(例:書面出願だと16,000円、電子出願だと14,000円)
- 時間や場所を問わず提出可能
- 処理が迅速である
- 履歴管理や再提出も効率的
初めて出願する場合や出願件数が多い企業は、弁理士に依頼することで電子出願の煩雑な準備を省くこともできます。
4. 出願公開
出願から約1年6か月後に、出願内容が一般に公開されます。この時点では、まだ特許権は発生していません。
5. 審査請求
出願後、3年以内に「審査請求」を行う必要があります。これを行わないと、出願は取り下げたものとみなされます。
6. 実体審査と拒絶理由通知
審査請求後、特許庁の審査官が出願内容を審査します。要件を満たしていない場合、「拒絶理由通知」が送られてくることがあります。その場合、意見書や補正書を提出して対応します。
7. 特許査定・登録料納付
審査を通過すれば「特許査定」が通知され、指定された期間内に登録料を納付すれば、晴れて特許権が発生します。
登録料については、最初に1年目から3年目までをまとめて納付する必要があります。2025年現在の料金体系は以下の通りです。
- 1年目〜3年目の登録料(各年分)
基本料:2,100円 × 年数
請求項加算:請求項1項あたり200円 × 年数
つまり、例えば請求項が5つある特許の場合、1年分の登録料は
2,100円+(200円 × 5)=3,100円 となり、3年分では合計 9,300円 になります。
登録後も、4年目以降の年金(登録料)を継続して支払う必要があります。年数が進むにつれて金額も上昇します。
- 4年目〜6年目(各年)
基本料:6,400円
請求項加算:500円/請求項 - 7年目〜9年目(各年)
基本料:19,300円
請求項加算:1,500円/請求項 - 10年目以降(最大20年まで)
基本料:55,400円
請求項加算:4,300円/請求項
年金を滞納すると特許権は失効してしまうため、継続的な管理が必要です。企業や個人発明家が複数の特許を持つ場合、年金管理の負担も無視できません。こうした費用面も踏まえて、必要な特許を見極めることが重要です。
弁理士は知的財産の専門家

弁理士とは、特許・商標・意匠などの知的財産に関する業務を専門に扱う国家資格の専門家です。特許出願書類の作成や、特許庁とのやり取り、先行技術調査、拒絶理由通知への対応など、出願から登録まで一貫してサポートします。
特許出願を弁理士に依頼するメリット
1. 書類作成の正確性と戦略性
特許出願に必要な明細書や特許請求の範囲は、非常に専門的かつ法律的な表現が求められます。記載の仕方によっては、本来守りたかった技術範囲が狭くなってしまうことも。弁理士は、発明の本質を見極め、最適な表現で出願書類を作成する能力があります。
2. 拒絶リスクの軽減
弁理士は過去の判例や審査基準を熟知しているため、拒絶されにくい戦略的な出願が可能です。拒絶理由が出された場合でも、的確な対応ができます。
3. 時間と労力の削減
自身で出願作業を行う場合、調査・書類作成・審査対応などに多大な時間と労力がかかります。弁理士に依頼すれば、これらの煩雑な作業を任せることができ、本業に専念できます。
4. 国際出願にも対応可能
将来的に海外で特許を取得したい場合、PCT国際出願などの手続きが必要です。弁理士であれば、国内外問わず、適切なアドバイスと対応をしてくれます。
特許出願は弁理士に依頼するのが成功への近道
特許出願は、単に書類を提出するだけではなく、発明の内容を正確に伝え、適切に保護するための高度な専門知識と戦略が求められます。特に、企業や個人事業主にとっては、知的財産の価値がそのまま競争力に直結する時代です。
そのため、出願の成功率を高め、確実に権利を得るためには、知的財産のプロフェッショナルである弁理士に依頼することが非常に有効です。M&T知的財産事務所はオンラインでも特許出願に関するご相談を受け付けております。無料で相談できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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